スミスの豊かな知は、その蔵書のみならず、同時代の知識人との交流によっても育まれました。なかでも、デイヴィッド・ヒュームとは、手紙のやり取りや自身の著作の贈呈を行なっていたことが知られています。著者が自身の著作を贈呈することは、当時の風習でもありました。また、彼らの手紙の中には、一読の価値のある書籍を紹介した内容のものがあり、こうした交流からもスミスは、蔵書と知識を増やしていったことが想像できます。
デイヴィッド・ヒューム『人間本性論』(ロンドン、1739年)
David Hume, A treatise of human nature
デイヴィッド・ヒューム『人間本性論』全3巻。総革装・綴付け製本。第1巻は、東京大学経済学図書館所蔵で、第2巻・3巻は、エディンバラ大学に所蔵されています。
展示画像は、第1巻から、タイトルページ、書入れのあるページ一部、ヒュームのものと考えられる書入れのあるページ(pp.178-179, 282-283)です。ヒュームによるとされる書入れは、本文を執筆する際の参照元の情報と推察されます。
第1巻タイトルページ
旧蔵者による
書入れのあるページ
(pp.12-13)
旧蔵者による
書入れのあるページ
(pp.14-15)
ヒュームのものと考えられる
書入れのあるページ
(pp.178-179)
ヒュームのものと考えられる
書入れのあるページ
(pp.282-283)
デイヴィッド・ヒューム『道徳・政治・文学論集』(ロンドン・エディンバラ、1770年)
David Hume, Essays and treatises on several subjects
デイヴィッド・ヒューム『道徳・政治・文学論集』全4巻。総革装・綴付け製本。スミスは、1741年版、1758年版、1770年版、1777年版の4種を所蔵していました。東京大学経済学図書館所蔵分は1770年版(全4冊)で、そのうち書入れがあるのは、第3巻「人間知性論」のみです。
展示画像は、第3巻のタイトルページ、本文に下線が引かれているページ、文法的な修正・加筆と考えられる書入れのあるページ(pp.42-43, 44-45)です。
第3巻タイトルページ
読書の痕跡がうかがえる
ページ
(第3巻, p.3)
読書の痕跡がうかがえる
ページ
(第3巻, pp,4-5)
文法的修正と考えられる
書入れのある ページ
(pp.42-43)
文法的修正と考えられる
書入れのあるページ
(pp.44-45)