設立から敗戦まで

図書館・資料室のコレクションは、研究・教育のための最も重要な基盤のひとつと言えますが、これらはもちろん一朝一夕に成ったものではありません。このコレクションが構築され始めた20世紀前半とは、歴史的な大事件が次から次に起こる激動の時代であり、蔵書や資料たちもそうした時代の波に呑まれ翻弄されてきました。数々の荒波を越えて今に残るモノとは、これに関わってきた有名無名の先人たちの努力と試行錯誤の痕跡とみることもできるでしょう。コレクション構築に関わる人物や事件についての知識は、現代の私たちにとって、遺されたモノの、コンテンツだけでなく、その物言わぬ側面を見るための契機ともなり得ます。

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高野岩三郎

法科大学時代

1900.4

法科大学の高野岩三郎講師(同年5月30日付助教授)が、ライプチヒにてエンゲル(Ernst Engel, 1821-1896)旧蔵書約14,000冊を公費購入し、東京大学に送付。

 

1900.5

エンゲル文庫購入を受けて、法科大学の松崎蔵之助教授主唱により、経済統計研究室を医科大学医化学教室二階に開設。

松崎蔵之助

東京大学平面図

(明治33年)


法・経・文学部 平面図

法文科大学本館

H.E.ヴェンティヒ

1909

経済統計研究室を法文科大学本館二階一隅の四室に移転。

 

1909.8

ヴェンティヒ(Heinrich E. Wantig, 1870-1943)着任。経済統計研究室の図書整備に協力。


新渡戸稲造

商業資料文庫印

アダムスミス蔵書寄附願

1910.12

高野岩三郎教授が研究室主任(図書の整備充実と助手の監督を担当)に着任。田尻稲次郎の寄付により「田尻文庫」の基礎形成。

 

1911.8

後藤新平ほか有志による寄付により関係図書の充実化推進。

 

 

1913.9

ベルリネル(Siegfried Berliner, 1884-1961)着任。経済統計研究室に商業資料文庫の設置を提唱(収集対象は企業経済の実証研究のための会社定款・営業報告書類)。

経済学部時代

1919.4

経済学部創設(法科大学より経済・商業二学科を分離独立)。本拠は本館階上の経済統計研究室および保険研究室。

1920.12

新渡戸稲造教授よりアダム・スミス旧蔵書寄贈。

 

『国富論』初版本

(田尻文庫1:207/2:2

S.ベルリネル

法文経済学部本館

経済統計研究室書庫

アダムスミス文庫書架

ベルリネル講義

(34番教室)

経済統計研究室


1923.9

関東大震災のため経済統計研究室は全焼、蔵書の大部分も焼失。研究室は医学部耳咽喉科病室の一部(地下室)に移転。

経済学部・文学部から

 運び出された図書


研究室主任印

経済学部研究室書庫

上代判金(79-A-1

大河内一男

1923.11

研究室の名称を経済学部研究室と改称。

 

1927.4

法学部・経済学部研究室および書庫の建物が完成し移転(7層書庫・図書事務室・学生閲覧室)。

 

1927

藤井榮三郎(深藪庵)より古貨幣(約12,000点)寄贈。

 

1929

安田善次郎(二代目、松廼舎)より寄贈された古札(約25,000点)搬入(1923年に「経済学攻究資料」として寄贈)。

 

1939.4

商業資料文庫を資料室に改称。大河内一男講師の指導のもと、収集対象を官庁・経済団体・企業等の刊行物に拡大。

 

1945.7

アダム・スミス文庫等貴重図書類を疎開。

法経研究室

新法経研究室

銭弐拾八文目預

(弘前藩 2-2-14

本郷キャンパス平面図

(震災後)